マンション法大改正で『地上げとスラム化』? 築40年177万戸の終活が変わる
「マンション法」大改正で”地上げとスラム化”の恐怖 - 現代ビジネス(6月29日, 現代ビジネス)
この記事の要約
マンション法(区分所有法)の大改正が議論されています。狙いはずばり「マンションの終活」、つまり建て替えや敷地売却を進めやすくすることです。背景には、全国779万戸のうち築40年以上が177万戸(22.7%)に達し、築30年超まで含めると4割を超える老朽化の深刻さがあります。 さらに住民の高齢化も進み、築40年超では世帯主の55%が70歳以上。管理組合の役員のなり手も不足しています。建物と住民の「二つの老い」が重なり、滋賀県野洲市の美和コーポのように廃墟化し崩落の危険にさらされる例も現れました。 一方で、合意要件を緩めれば建て替えや売却が進む反面、業者による地上げや、取り残された住民・物件のスラム化を懸念する声もあります。
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そもそも「マンション法」って何でしょうか? 普通の法律とどう違うんですか?
正式には「区分所有法」という法律です。一棟のマンションを部屋ごとに分けて所有する、その権利関係やルールを定めたものです。
ポイントは、共用部分やマンション全体の重要なことを決めるには、所有者みんなの「合意」が必要だということ。建て替えなどは特に高い賛成割合が求められます。今回の改正は、この合意のハードルを下げる方向で議論されています。
合意のハードルが高いと、何が困るんですか? みんなで決めればいいのでは、と思ってしまいます。
それが実はとても難しいんです。今の法律だと、建て替えには所有者の5分の4以上の賛成が必要です。100戸なら80戸分の賛成がいる計算です。
ところが住民が高齢化し、連絡が取れない人や相続でもめている空き部屋が増えると、賛成を集めること自体が物理的に不可能になります。結果、何も決められず、建物がただ朽ちていくわけです。
記事にあった滋賀県の廃墟マンションは、まさにそういう状態だったんですね。
その通りです。美和コーポは2009年ごろから全室が空き家になり、地震で壁が崩れ落ちて鉄骨がむき出しになりました。
怖いのは、こうした物件が一つあると周辺の治安や資産価値にも悪影響が及ぶことです。崩落の危険は通行人にも及びます。だからこそ「終活」を進める仕組みが必要だ、という流れになっています。
なぜ今、こんなに老朽マンションが増えてしまったのでしょう?
日本でマンションが本格的に普及したのは高度成長期からバブル期です。当時建ったものが今ちょうど築40年、50年を迎えています。
しかも当時買った人がそのまま住み続け、一緒に年を取りました。築40年超では世帯主の55%が70歳以上というデータがそれを示します。建物と人が同時に老いる「二つの老い」が、いま一気に表面化しているんです。
改正で合意のハードルが下がれば、問題は解決に向かうんですよね?
前進する面は大きいです。賛成割合が下がれば、これまで止まっていた建て替えや敷地の一括売却が動き出します。
ただ記事のタイトルにある「地上げ」の懸念もここにあります。合意が取りやすくなるほど、不動産業者が安く買い集めて再開発を狙う動きが活発になります。少数派の住民が望まない売却に巻き込まれるリスクが出てくるわけです。
地上げって、昔の言葉のイメージですが、今でもあるんですか?
形を変えて存在します。今は強引な追い出しではなく、合意要件の緩和という「合法的な多数決」で進む点が新しいんです。
一方で「スラム化」の心配も残ります。建て替えや売却が成立しない中途半端な物件は、逆に見放されて荒廃が加速する恐れがある。法改正は万能薬ではなく、勝ち組と負け組の物件をはっきり分ける可能性があります。
賃貸の現場には、どんな影響がありそうですか?
まず築古マンションの賃貸では、将来の建て替えや売却リスクの説明が一段と重要になります。借りた後に取り壊しが決まる可能性があるからです。
売買でも、管理組合がきちんと機能しているか、修繕積立金は足りているかが価値を大きく左右します。同じ立地でも「終活できる物件」と「できない物件」で価格差が広がっていくでしょう。
私たちエージェントは、この知識をどう活かせばいいでしょうか?
まず結論から言えば、「管理と合意形成のプロ」になることが差別化の鍵です。物件の立地や築年数だけでなく、管理組合の健全さや将来の建て替え見通しまで読み解けるエージェントは、顧客にとって唯一無二の存在になります。
具体的には、修繕積立金の水準、所有者の高齢化や空き部屋の割合、過去の総会の合意状況を確認する習慣をつけましょう。買主には将来リスクを、売主には今のうちに売る判断材料を提供できます。法改正の動きをいち早く伝えられる人こそ、これからの市場で選ばれる担当者になります。
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