基準地価5年連続上昇でも札幌・博多で再開発中止、建築費高騰の分岐点
基準地価5年連続上昇 建築費高騰で名古屋や札幌など地方は伸び鈍る - 日本経済新聞(9月15日, 日本経済新聞)
この記事の要約
2026年の基準地価は全用途の全国平均が前年比1.5%上昇し、5年連続のプラスとなりました。東京圏5.4%を筆頭に三大都市圏がけん引し、投資マネーがオフィスやホテル、マンションに集まっています。銀座2丁目が21年連続で最高地価、赤坂の住宅地や中野駅周辺の再開発地点も大きく上昇しました。 一方で地方の伸びは鈍化しています。名古屋圏は上昇率が縮小し、実需層が郊外の戸建てに流れる動きも出ました。札幌・仙台・広島・福岡の地方4市も伸びが縮み、建築費高騰で住宅の買い控えや再開発の中止・延期が目立ちます。 象徴的なのがJR九州の博多駅複合ビル建設中止や、JR北海道の札幌駅直結再開発の完成延期です。建築費が地方の賃料上昇では吸収しきれず、都内でも開発先送りが出始めています。
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地価が5年連続で上がったと聞くと景気がいい話に思えます。でも札幌や博多では再開発が中止になっているんですよね。地価は上がっているのに、なぜ工事はやめてしまうんですか?
結論から言うと、土地の値段が上がることと、建物を建てて採算が合うことは別問題だからです。地価上昇は「その土地を欲しい人が多い」というサインにすぎません。
一方で建物を建てるには工事費がかかります。今は資材や人件費が高騰し、建築費が以前の2倍近くになった案件もあります。土地が値上がりしても、建てるコストがそれ以上に膨らめば事業は赤字になり、計画を止める判断になるのです。
でも東京では中野駅周辺が25%も上がって、再開発が進んでいます。同じように建築費が高いはずなのに、なぜ東京は大丈夫なんですか?
カギは「賃料でコストを回収できるかどうか」です。東京はオフィスもマンションも賃料や販売価格が高く、しかも上がり続けています。だから建築費が膨らんでも、完成後の家賃収入で十分にペイできます。
ところが地方4市では、地価は上がっても賃料の上昇はそこまで大きくありません。つまり建築費の増加分を家賃に転嫁しきれない。同じ建築費高騰でも、都市部は吸収でき、地方は吸収できないという差が出ているわけです。
名古屋圏では実需の人たちが郊外の戸建てに流れたとありました。これはどういう動きなんでしょうか?
これは「中心部が高くなりすぎて、普通に家を買いたい人がついていけなくなった」動きです。名古屋中心部のマンション価格が上がり、一般の会社員では手が届きにくくなりました。
その結果、愛知県の郊外や岐阜県で戸建てを探す人が増えています。同じ予算なら郊外のほうが広い家を持てるからです。中心部の地価上昇が、周辺エリアの需要を押し上げるという波及が起きています。
賃貸の現場で見ると、この地価の話はどう関係してくるんですか?
まず賃貸オフィスやマンションの価格上昇が地価をけん引しているので、賃料には上昇圧力がかかりやすい局面です。特に東京や大阪の都心では、新築の賃料が高止まりする可能性が高いです。
一方で、再開発が止まると新築の供給が遅れます。そうなると割安な既存物件に需要が集まりやすい。エージェントとしては、新築待ちの顧客に「いつ供給が出るのか」を踏まえた提案ができると強みになります。
記事に、既存ビルが使われないままだと将来の地価にマイナスという指摘がありました。これはどういう意味ですか?
これは「建て替えが止まると、古いビルが放置され、街の魅力が落ちる」という懸念です。本来なら古いビルを壊して新しい価値の高い建物にするはずが、建築費のせいで先送りされます。
古いまま空室が続くビルが増えると、そのエリア全体の収益力が下がります。収益力が下がれば、土地の評価もいずれ下がる。今の地価上昇の裏で、こうしたリスクの芽が育っている点は押さえておくべきです。
エリアによってこんなに事情が違うと、全国一律の「地価上昇」というニュースだけ見ていては危ないですね。
まさにその通りです。同じ「上昇」でも、東京圏のように賃料が伴う健全な上昇と、地方のように賃料が追いつかず開発が止まる上昇では意味が全く違います。数字の裏側にある構造を読むことが重要です。
この視点を持てば、単に「地価が上がっています」と伝えるだけの営業から一歩抜け出せます。顧客には『この街は賃料上昇が伴うから供給も続く』『こちらは開発が止まりやすいので既存物件が狙い目』と、エリアごとの力学まで語れる。その一言の解像度の差が、プロとしての信頼と差別化につながります。
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