賃貸不動産の相続税「5年ルール」導入 タワマン節税の次は何が変わる?
相続&実家の処分:貸付用不動産の相続税評価に導入される「5年ルール」とは 高山弥生 - 週刊エコノミスト Online(7月12日, 週刊エコノミスト Online)
この記事の要約
2026年度税制改正で、相続税の「貸付用不動産の評価方法」に大きな見直しが入ります。相続が始まる前の5年以内に購入した一定の賃貸用不動産は、原則として「時価(実際の取引価格)」で評価される、いわゆる「5年ルール」の導入です。 これまで賃貸マンションやアパートは、相続税評価額が市場価格より大幅に低くなることを使った節税の“王道”でした。土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基礎に評価され、さらに貸家・貸家建付地として減額されるためです。 2024年のタワマン節税の見直しに続く流れで、評価額と時価の差を縮める狙いがあります。今後は駆け込み的な購入では効果が薄れ、より長期・計画的な対策が求められることになります。
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そもそも、なぜ賃貸マンションを買うと相続税が安くなるんですか? 現金で持っているのと何が違うのでしょう。
結論から言うと、「同じ財産でも、評価される金額が下がる」からです。現金1億円は1億円のまま課税されますが、同じ1億円で不動産を買うと評価額はぐっと下がります。
土地は時価の8割ほどの路線価、建物は固定資産税評価額を基礎にするので、それだけで市場価格より低くなります。さらにその物件を人に貸すと、貸家・貸家建付地といって「自由に使えない分だけ価値が下がる」という考え方で、もう一段引かれるのです。
なるほど。貸すと自分で自由に使えないから安く評価される、という理屈なんですね。でも、それがなぜ問題視されたのでしょう。
問題は、その「値引き」が実態以上に大きくなりやすい点です。実際の売買価格と相続税の評価額との間に、大きな開き(乖離)が出ていました。
極端に言えば、相続直前に借金してマンションを買い、評価額を大きく下げて相続税を減らし、相続後すぐ売る、という使い方も見られました。これは節税というより「税逃れに近い」と国が判断したわけです。
それで今回の「5年ルール」なんですね。具体的にはどういう仕組みなのでしょう。
ポイントは「買ってから相続まで5年以内かどうか」です。相続が始まる前の5年以内に購入した一定の賃貸用不動産は、原則として時価(実際の取引価格)で評価する、という内容です。
つまり駆け込みで買っても、評価が下がる恩恵をすぐには受けられなくなります。逆に言えば、5年より前から持っていた物件は従来の評価が使える、という時間の線引きが入ったわけです。
2024年にもタワーマンションの評価が見直されたと聞きました。今回とはどう違うんですか?
24年の改正は「マンション1室(居住用の区分所有)」が対象で、主にタワマン節税をねらったものでした。高層階ほど市場価格と評価額の差が大きかったので、そこに補正を入れた形です。
今回はそれとは別の入り口で、「賃貸用の不動産全般」に、購入からの期間という物差しでメスを入れました。狙いは共通で、評価額と時価の差を縮めることです。段階的に節税の穴を塞いでいる流れと見てください。
これって、賃貸物件を買う人が減ってしまう心配はないんですか?
節税「だけ」を目的にした短期の駆け込み購入は、確かに動機が薄れます。ただ、賃貸経営そのものは家賃収入を生む事業なので、需要が消えるわけではありません。
むしろ「長く持って運用する人」と「節税目的で短期に回す人」がはっきり分かれます。5年という期間を超えれば従来評価が使えるので、早く決めて長く持つほど計画は立てやすくなります。
現場のエージェントとしては、この話をどう使えばいいでしょう。売買の提案が難しくなるだけでは?
逆です。難しくなるからこそ、正しく説明できる人の価値が上がります。相続対策で買いたいお客様には「5年以内だと時価評価になる可能性がある」と早めに伝え、購入時期の設計を一緒に考えるのが第一歩です。
また、相続直前の駆け込み購入は効きにくくなったので、税理士との連携提案が刺さります。売却側でも、相続で取得した賃貸物件をいつ売るかで評価や税負担が変わるため、タイミング相談の入口になります。
なるほど。ただ物件を売るだけでなく、時間の設計まで一緒に考えるのがプロなんですね。
その通りです。今回の改正の本質は「駆け込みは効かない、長期・計画が前提」という時代への転換です。ここを噛み砕いて説明できるだけで、他社との差がつきます。
具体的には、購入から5年の起算点、税理士との役割分担、相続後の売却時期という3点セットで相談に乗れる体制を作ってください。単なる仲介者ではなく「相続と資産の時間軸を一緒に設計する相談相手」になれることが、これからのエージェントの最大の差別化になります。
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