神戸市が全国初「マンション空室税」へ─空室率19%都心の狙いとは
社説>マンション空室税/納得のいく合意形成をマンション空室税|オピニオン - 神戸新聞NEXT(8月22日, 神戸新聞NEXT)
この記事の要約
神戸市の有識者検討会が、都心の分譲マンションを対象とした「空室税」導入を求める答申を久元市長に提出した。実現すれば居住実態のない空室に対する全国初の課税となる。三宮周辺の建設規制エリアでは住民登録のない部屋が19%に達し、将来の管理不全や廃虚化が懸念されている。 市が特に警戒するのは投資目的で保有する非居住者の増加だ。価格高騰を招くだけでなく、修繕積立金の値上げに反対しやすく、修繕や建て替えの合意形成を難しくする。課税対象をタワマンに限らず都心の全分譲マンションとしたのは、実効性を高める狙いがある。 一方、法定外税には市会の議決と総務大臣の同意が必要で、固定資産税との二重課税批判への説明も求められる。転勤や施設入所など一時的な非居住への配慮、居住実態の把握、丁寧な制度設計が不可欠となる。
専門家がニュースをわかりやすく解説!
「空室税」ってはじめて聞きました。空いてる部屋に税金をかけるって、そもそもどういう発想なんでしょうか?
ひとことで言うと「使われていない住宅を放置させない」ための税です。神戸市の狙いは、都心のマンションに人が住まず空室のまま放置されることを防ぐことにあります。
背景には空室率の高さがあります。三宮周辺の規制エリアでは、住民登録のない部屋が19%、つまり5戸に1戸近くが実際には人が住んでいない計算です。この状態が続くと、建物の管理が回らなくなる恐れがあるのです。
空室が多いと、住んでいる人にどんな困りごとが出てくるんですか?空いているだけなら誰にも迷惑をかけていない気もします。
いちばんの問題はマンションの「管理」です。マンションは住民が集まって管理組合をつくり、修繕やルールを話し合いで決めます。空室が多いと、この話し合いに参加する人が足りなくなるのです。
さらに、投資目的で持っている人は自分が住まないため、修繕積立金の値上げに反対しがちです。すると屋上防水や外壁補修などの大規模修繕が先送りされ、建物全体の劣化が進みます。結果として、住んでいる人の資産価値も下がってしまうわけです。
なるほど。でも神戸市はなぜ、そもそもタワマンを規制するようになったんですか?人気の物件なら建てたほうが街も潤いそうですが。
神戸市は2020年に、三宮などの都心部でタワマンの新規建設を規制しました。理由は、都心を住宅だらけにするのではなく、商業やオフィスの機能を高めたいという街づくりの方針です。
都心が投資用マンションで埋まると、価格が上がって本当に住みたい人が買えなくなります。街の活気やビジネス機能も薄れる。神戸市はそこに危機感を持ち、今度は空室税で「持っているだけ」の状態にコストをかけようとしているのです。
対象を「タワマンだけ」ではなく「都心の全分譲マンション」にしたのはなぜでしょう。タワマンが問題なら、そこに絞ればよさそうですが。
理由は二つあります。まず、タワマンには明確な法律上の定義がなく、「高さ何メートル以上」と線引きするのが難しいからです。線を引けば、その少し下の建物との公平性が問題になります。
もう一つは実効性です。空室を減らして人に住んでもらうという目的なら、全体を対象にしたほうが効果が広く及びます。居住者が増えれば管理組合の担い手も増える、という副次的な効果も期待できるのです。
でも「固定資産税を払っているのに、また税金なの?」という不満は出そうです。二重課税にはならないんですか?
まさにそこが最大の論点です。固定資産税は「資産を持っていること」への税、空室税は「居住実態がないこと」への税、と性格が違うと市は説明する必要があります。ここを納税者に納得してもらえるかが勝負です。
加えて、この空室税は「法定外税」といって、国が定めた税ではありません。導入には市議会の議決と総務大臣の同意が要ります。ハードルは決して低くないのが実情です。
転勤や入院で一時的に空けている人もいますよね。そういう人まで課税されたら気の毒です。
おっしゃる通りで、制度設計の丁寧さが問われます。転勤、単身赴任、施設への入所といった一時的な非居住まで一律に課税すれば、市民の反発を招きます。
そのため、居住実態をどう把握するか、どこまでを「空室」とみなすかの線引きが重要になります。社会情勢に応じた見直し規定を入れるべき、という指摘もあり、施行までに十分な周知期間が必要とされています。
これが実現すると、私たち現場の不動産担当にはどんな影響が出そうですか?
賃貸の現場ではむしろ追い風になり得ます。課税を避けたい所有者が「空けておくより貸そう」と動くため、都心で賃貸に出る物件が増える可能性があるからです。空室税は投資家に「稼働させる」圧力をかける制度だと理解しておきましょう。
売買では、投資目的の非居住者向けに「保有コストが上がる前提での収支」を示せるかが差別化になります。管理状況や修繕積立金の健全性を語れるエージェントほど信頼されます。
まとめると、空室税は単なる増税ニュースではなく『管理の質と稼働率が資産価値を左右する時代』の象徴です。この視点を持ち、顧客に管理リスクと賃貸活用の両面を提案できれば、あなたは他社と一線を画す存在になれます。
10分でわかる
不動産ニュース解説とは?
不動産に関するニュースを、不動産エージェント向けに実務にも活かせるよう、わかりやすく対話形式で解説するコンテンツです。