長期金利3%で崩れるマンション神話 都心3区に何が起きた?
崩れる「上昇神話」 金利高に備えよ 急変マンション相場① - 日本経済新聞(9月18日, 日本経済新聞)
この記事の要約
「マンション価格は上がり続ける」という神話が崩れ始めています。東京の都心3区(千代田・中央・港)では中古マンションの値付けが弱含み、都内の新築大型物件でも値下げの動きが出てきました。 最大の要因は金利の急上昇です。長期金利が30年ぶりに3%をつけるなど、住宅ローンや不動産投資の前提が急ピッチで変わっています。これまで売り出し価格と成約価格の差(=「ワニの口」)が広がってきましたが、それが閉じ始めたことも、相場転換の兆しと見られています。 湾岸など一部エリアでは在庫が増え、今後1割程度の値下がりを予想する声もあります。一方で5億円級の超高額物件は富裕層が支え、動じにくいとの見方もあり、価格の「二極化」が進む可能性があります。
専門家がニュースをわかりやすく解説!
ニュースで「マンションの上昇神話が崩れる」と見ました。あんなに上がり続けていたのに、なぜ急に雰囲気が変わったんですか?
いちばんの理由は金利の上昇です。長期金利が30年ぶりに3%をつけたことが大きい。
金利が上がると、住宅ローンの毎月の返済額が増えます。同じ年収でも「借りられる金額」が減るので、買い手が出せる価格の上限が下がる。結果として、価格を押し下げる力が働き始めたんです。
でも今まではずっと上がっていましたよね。なぜこれまでは金利が上がっても平気だったんでしょう?
これまでは超低金利が長く続いていたからです。ローンがほぼタダ同然の水準で借りられたので、多少価格が高くても返済が回りました。
そこに海外の投資マネーや、共働きで高収入の世帯(=パワーカップル)の需要が重なり、価格を押し上げてきた。つまり「金利が低い」という土台の上に神話が乗っていた。その土台が揺らいだ、というのが今回の本質です。
記事に出てくる「ワニの口」って何ですか? 閉じ始めたと書いてありましたが。
「ワニの口」は、売り出し価格と実際に売れた成約価格の差のことをたとえた言葉です。
強気の相場では、売り主が高い希望価格をつけても、それに近い値段で売れていく。だから2本の線(売り出しと成約)が上向きに開いてワニの口のように見えた。それが閉じ始めたということは、高い希望価格が通らなくなり、値引きしないと売れない局面に入ったサインなんです。
全部のマンションが値下がりするんでしょうか? それともエリアで差が出ますか?
エリアと価格帯でくっきり差が出そうです。まず湾岸など供給が多い地域は在庫が増えており、今後1割程度下がるとの見方もあります。
一方で5億円級の超高額物件は、そもそもローンに頼らない富裕層が買うので金利の影響を受けにくい。だから「値下がりする層」と「動じない層」に分かれる、二極化が進む可能性が高いと見ています。
金利が上がると、買う人の行動そのものも変わるんですか?
変わります。予算が同じでも、都心をあきらめて郊外に流れる人が増えます。
記事でも「金利2.5%なら国分寺、5%なら西八王子」といった例が出ています。金利が上がるほど、同じ返済額で買える場所が郊外へずれていく。通勤時間は延びますが、価格を優先する層は確実に動きます。エリアの需要地図が塗り替わるイメージです。
これは売る人にとっては悪いニュースですよね。賃貸の現場にも影響しますか?
賃貸にはむしろ追い風の面があります。買うのをためらう人が「今は賃貸で様子を見よう」と考えるからです。
ローン負担が重くなると、購入と賃貸のコスト差が縮まり、賃貸を選ぶ合理性が高まる。特に都心の分譲賃貸や、購入を見送った層の受け皿となる物件は、問い合わせが増える可能性があります。売買が鈍る局面こそ、賃貸の需要を取り込むチャンスです。
私たちエージェントは、この状況をどう説明すれば信頼されますか?
まず「上がり続ける前提」で話すのをやめることです。相場の潮目が変わった今、根拠なく強気を言うエージェントは信用を失います。
代わりに、金利水準ごとに買える価格帯やエリアがどう動くかを具体的に示せると強い。「金利が上がったら都心から郊外へ需要が動く」「湾岸は在庫が増えている」といった構造を、お客様の予算に合わせて翻訳してあげる。
なるほど。売り主・買い主それぞれにどうアドバイスすればいいでしょう?
売り主には「ワニの口が閉じた=強気の値付けは通りにくい」と早めに伝え、売り時を逃さない現実的な価格設定を提案する。迷って高値放置するほど機会を失います。
買い主には、金利が返済額と選べるエリアを左右することを数字で見せ、無理のない予算設計に導く。そして賃貸の相談者には「今は買い時か賃貸か」を金利前提で冷静に比較してあげる。相場が急変する時こそ、二極化と金利の力学を語れるエージェントが、他と差がつく本物の専門家として選ばれます。
10分でわかる
不動産ニュース解説とは?
不動産に関するニュースを、不動産エージェント向けに実務にも活かせるよう、わかりやすく対話形式で解説するコンテンツです。